ジムノペディが好きだ。クラシック音楽はあまり聴かないが,唯一この曲だけは,寝る前に聴くお気に入りだ。この曲がどのような背景で作られたのか知らないから勝手なイメージがある。真夜中,新月,深い針葉樹林の森,星の光が映る青い漆色の湖,表面をすくう様に吹く風,揺れる水面,森全体に湖の鼓動が広がっていく。この森には今,私しかいなくて,私は森のことは全てわかる。私は何かと想像や思考において,水を連想したり,例えに使ったりすることが多い。おそらく,幼少期を種子島で過ごしたからだ。と言っても7歳になる前に島を離れたので,あまり良く覚えていないが,おそらくユニークな特徴として,私は泳ぐことよりも潜ることが好きだった。ターコイズ色の海水,貝殻の死骸でできた海底を,小さい私は這っていた。消毒されそうなくらい塩辛い海水,ザクっとした冷たい海底に,身体を押し当てていた。長く海に浸かっていると,塩の味が濃くなっていき,水圧で耳が痛くなってくる。また,浮力に逆らいながら海底に留まりたい。来世は,森とか空とか海とか,そういう自然になりたい。私の海は,絶対に多様な生物のものになると思うし,たくさんの物語を作れると思うし,人間が何か悪さをしだしたら,しっかりと成敗すると思う。おそらく,人間に有無を言わせない大きな存在に憧れている。

ジムノペディは,第1番から第3番までの3曲で構成され,それぞれに指示があるらしい。1番から順に,ゆっくりと苦しみをもって,ゆっくりと悲しさをこめて,ゆっくりと厳粛に。