新しい時代になった。この国は、とても平和で豊かな国だ。もう、人間や動物や自然の、汚いところ、おぞましいところ、難しいところ、複雑なところ、それらを知らなくても何不自由なく生活することができるようになった。しかし、それは当たり障りのない生活に慣れすぎている私たちの存在の象徴のような気がして、少し怖いなと思うことがある。自分の脅威に対する感覚を、研ぎ澄ませないと、生ぬるい温度でふやけて腐ってしまいそうな気分になる。だから私は、時々昔のおぞましい事件や出来事について調べたり、グロテスクなものや、倫理観の外れた、刺激を求めてしまうことがある。